ポルシェ911において、ターボではなく「GT3/GT3RS」を選ぶのはなぜか?

好むと好まざるに関わらず、クルマ好きであるなら、ポルシェ911の存在を知らない人はいないことでしょう。1964年に356の後継モデルとして誕生してから今日に至るまで、たゆまぬ進化を続けながら53年ものあいだ、スポーツカーであり続けています。

964型の911がデビューしたときは4WDのカレラ4が先行発売され、追ってRR(2WD)のカレラ2がデビュー。このカレラ2は「ティプトロニック」という、AT車の一般的なシフトパターンに加えて、画期的な人間の意思でシフトアップダウンが行える機構が備わりました。この亜流ともいえるATは日本車にも採用されました。

それまでは「乗り手を選ぶ」スポーツカーであったポルシェ911が、ティプトロニックという名のAT、パワーステアリングという装備を手に入れたことで、一気にユーザー層の裾野が広がりました。

果たして、ポルシェ911はスポーツカーなのか?

現時点において、少なくともオフィシャルサイトでは、ポルシェ911をスポーツカーと定義しています。2+2のGTカーと解釈する人がいるかもしれませんし、ピュアスポーツカーと考える人、あるいはレーシングカー(あるいは限りなくレーシングカーに近い存在)として捉える人もいるに違いありません。

991型と呼ばれる現行モデルのポルシェ911は、もっともベーシックなカレラから、よりスポーティなカレラS、美味しいとこ取りのカレラGTS、4WDモデルのカレラ4、ワイドボディのカレラ4S、カレラGTSの4WDモデルであるカレラ4GTS、タルガ(カレラ4系のみ)やカブリオレ、さらにはターボやGT3およびGT3RS、ターボ/ターボSなど、マニアやポルシェ関係者ですら混乱しかねないほどの選択肢があります。

ここからさまざまなオプションを組み合わせることで、よりスポーティかつレーシーに、その反面、ラグジュアリー方向にもアレンジが可能です。いずれにしても、ポルシェ911というクルマの振れ幅がそれだけ大きく、懐の深いシャーシとメカニズムを持ち合わせているからこそ実現できるのです。

純粋なRRで駆動させるGT3/GT3RSとポルシェの思想を具現化した4WDを持つターボ

ポルシェ社のテストドライバーであるワルター・ロール氏の見解では、完成度がもっとも高いモデルはターボだとされています。しかし、これには「公道を快適に走る」という意味合いが含まれていると推察されます。同時に、純粋に走ることを優先するステージではRRの911を選ぶ考えも併せ持っています。つまり、サーキット走行やコンペティションな状況で911を楽しむのであれば、やはりGT3/GT3RS系が理想的と考えるのが妥当ではないでしょうか。

一方で、911ターボは1974年パリサロンにて発表され、翌年1975年に発売。日本には1976年に上陸、公道の王者として長年君臨してきました。高速道路を走っていたとき、背後からすさまじい勢いのクルマが迫ってきて、あっという間に抜き去さられ、視界から消えていった・・・。そのクルマの正体は911ターボだった・・・という経験があるのではないでしょうか。発売当初の最高出力は260psだった911ターボも、最新型の991型では540ps(ターボSは580ps)をたたき出すパイパワーマシンとなりました。

最高速度も250km/hオーバーから320km/h(ターボSは330km/h)と、もはや300km/hオーバーを標榜するスペックは当たり前のような時代となりました。と同時に、部品の点数が多いことや、ターボ専用のものが採用されている分、「ターボ系はカレラ系の1.5倍の維持費が掛かる」・・・という伝統もほぼそのまま受け継がれているのです。

ターボではなく、GT3/GT3RSを選ぶのはなぜか?

筆者の考えでは、日本では「ナローポルシェ」と呼ばれている最初期のポルシェ911。パワーステアリングも、ABSも、PDKも、そしてトラクションコントロールシステムの類いが一切装備されていない、結果的にもっともピュアだった時代のポルシェ911。この時代の世界感を求めるとしたら、現代においてはGT3/GT3RS系がその役割を担うのではないでしょうか。

911R、カレラRS2.7、SCRS(930)、カレラRS(964&993)、996にフルモデルチェンジして以はGT3とその名を変えつつも、多くのポルシェフリークが理想とする「究極のポルシェ911」の姿を、その時代背景と融合させつつ、世に送り出していることに、これからも変わりはないと思われます。いずれはポルシェ911にもPHEVやEVモデルが投入されることになると予想しますが、姿形は変われど、GT3/GT3RS系に相当するモデルが存在し続けることは間違いないと予想します。

果たして、ポルシェ911の頂点に君臨するのはターボか、GT3/GT3RSか?

念願のポルシェ911オーナーへの扉を開いた瞬間から、趣味を同じくする仲間も自然と増えていきます。いつの時代も、一定数の割合で、よりハードかつ高性能なポルシェ911を求めるユーザーが現れます。

手に入れた当初はあれほどノーマルのカレラの性能に満足していたはずなのに、ふとしたきっかけで試乗したターボやGT3系の走りに魅了されてしまうオーナーが後を絶ちません。

ポルシェ911のオーナーになることはゴールではありません。それはこれまでとは違う種類の、楽しくも悩ましい日々のはじまりなのです。

より仕事に励み、自身が成長を遂げることで、より高性能(誤解を恐れずにいえば高額な)なポルシェ911の扉を開くことになります。ざっと、選択肢はこのあたりでしょうか。

1.より快適で高性能なターボ系のモデルを選ぶ

2.よりハードかつレーシーなモデルであるGT3/GT3RS系のモデルを選ぶ

3.先祖返りを起こして空冷ポルシェ911モデルを選ぶ(あるいは増車する)

4.他メーカーのモデルを選ぶ

「ポルシェ911の頂点に君臨するのはターボか、GT3/GT3RSか?」という質問自体がもはや愚問というべきでしょう。それはなぜか?シルエットは同じポルシェ911なれど、それぞれが似て非なるモデルだからです。より速く、より快適に目的地を目指すことが主眼目であれば、ターボを選ぶべきです。それよりは、早朝のワインディングロードや、サーキットなど、クルマの性能を味わい尽くすことを望むのであればGT3/GT3RS系を選んだ方が幸福度は増すに違いありません。

あれほどノーマルのカレラ系で満足していたはずの自分が、より快適か、よりハードな世界を求めるか、じっくりと見極めたうえで、次のステップを踏んだ方が、より自分にあったポルシェ911を選ぶことができると確信しています。

レース直系のGT1クランクケースを心臓部に持つ、正統派ロードゴーイングレーサーを味わう

911Rからはじまり、現行型のGT3RSにいたるまで、各年代のポルシェ911のなかでもっともレーシーなNAエンジンを搭載するモデルとしてその血統は受け継がれています。では、いまもっとも触れておきたいモデルは何か?その答えをひとつ挙げるとしたら、「GT3RS(997型/前期)」ではないでしょうか。かつて、1996年〜1998年ル・マン24時間耐久レースにおいて、ポルシェワークスマシンとして参戦したマシン「ポルシェ911GT1」のクランクケースがエンジンに使われている最後のGT3系のマシンになります。

3.6L水冷フラットシックスはNAながら415psをたたき出し、最高速は310km/h。車両重量は1375kgと、同世代の997ターボと比較して1580kg(6速MT)より200kg軽量であることからも、いかに鋭い挙動を示すかが容易に想像できるでしょう(ちなみに、ターボは480ps、最高速度は310km/h)。

ロードゴーイングレーサーとしての資質を持ち合わせるだけでなく、ル・マンカーと同じ部品が組み込まれたエンジンを3ペダルMTで操る・・・。それは、限られた人にだけ許された特別な時間であることは間違いなさそうです。

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