ロールケージやフルバケットシートのメリット・デメリットとは?

レーシングカーは、内装がすべてはぎ取られるだけでなく。ロールケージやフルバケットシートなどが装着され、市販車では見たことがないような仕立てとなっています。サーキットをハイスピードで掛け抜け、他のレーシングカーとバトルを安全に繰り広げるためには必要な不可欠な装備であることはいうまでもありません。 ポルシェ911にも、ロールバーや難燃性素材を使ったフルバケットシートを装着した「クラブスポーツパッケージ」が存在します。では、ロールバーやフルバケットシートを装着するメリット・デメリットとはどのようなものでしょうか。 *記事上では記述を「ロールケージ」で統一します

サーキット走行するなら必須アイテム?

FIA(国際自動車連盟)、JAFなどが開催するレースには、レギュレーションに適合したロールケージの装着が義務づけられています。この基準を満たしていなければ、レースに参加することすらできないのです。あくまでも、ドライバーの安全を保護するのが最優先という考えのうえでレースが行われているのです。 また、サーキットで走行会やスポーツ走行をする場合、ロールケージやフルバケットシートを装着する以前に、エンジンオイルやタイヤ、ブレーキパッドなどの消耗品を交換したうえで臨むことが理想的です。ロールケージやフルバケットシートの装着は限りなく必須アイテムに近い装備であり、まずはクルマの予防整備を優先することが先であると考えます。

クラブスポーツパッケージの存在意義とは?

ポルシェ911で「クラブスポーツ」の名が使われはじめたのは、タイプ930の時代に販売された「ポルシェ911カレラ クラブスポーツ」であるといわれています。ポルシェ911には、古くはワークスチューンとしてオプション設定されていましたし、964の時代にもクラブスポーツに相当するパッケージが用意されていたことは間違いありません。世の中に広く知られた存在とはいえませんでした(それよりも、同時代に販売されていた「ポルシェ968クラブスポーツ」の方がはるかに有名でしょう)。 内装を簡略化(剥き出し)にし、ホワイトボディの段階からロールケージが組み込まれ、難燃性フルバケットシートなどが装着された「クラブスポーツパッケージ」が世に知られるようになったのは993の時代からといえます。メーカーオプションとして993RSおよび993GT2にはクラブスポーツパッケージが用意され、まさにロードゴーイングレーサーさながらの仕立てとして販売されたのです。エアコンを装備できる設定はあったものの、限りなくレーシングカーに近い仕様であったクラブスポーツパッケージは、当然ながら生産台数も少なく、結果としてマニア垂涎のアイテムとなっていくのです。 昨年9月にロンドンで開催されたRMサザビーズオークション会場で落札された993GT2(ロードバージョン)は2億5千万を超える金額となり、大きな話題となりました。同オークションに出品された993RSクラブスポーツは約5,500万円で、マニア垂涎のカレラRS2.7ライトウェイトモデルは約3,100万円。オークションに出品されるレベルのコンディションを誇る993GT2(クラブスポーツパッケージ)ともなれば、いまやRSカレラRS2.7をはるかに凌ぐ落札価格で取引される時代となったのです。

ロールケージやフルバケットシートを装着すると、街乗りには不向きなクルマになる?

サーキットでクルマが横転したときにドライバーを保護する役目を担うロールケージと、公道ではほぼ考えられないような速度域でコーナリングする際に、身体を固定するためのフルバケットシート。いずれも見た目にはレーシーで、ひとことでいえば見た目にも「格好良い」装備です。 しかし、いずれもレースでの使用を前提に設定された装備です。街中でこれらの装備を取り付けたクルマに乗るのは、ある種の忍耐と苦痛を伴います。ロールケージによって乗り降りが面倒になりますし、スカートを穿いた女性が乗り込むときには確実にクレームがきます。フルバケットシートは身体をしっかりと固定してくれる反面、リクライニングする機能がありませんし、クッションが薄いので、長距離ドライブでは腰が痛くなります。よくよく考えて装備を選んだ方がよさそうですね。 こちらはRUF CTR3の内装です。このクルマのインテグレートロールケージのように、ピラー内部にロールケージを隠してしまうような手法も存在しますが、これは一般的とはいえないため、後付けには不向きといわざるを得ません。

ロールケージやバケットシートを装着するメリット・デメリットとは?

以下に、ロールケージやバケットシートを装着するメリット・デメリットをまとめてみました *ロールケージのメリット ・事故や横転時にドライバーを含めた乗員を保護してくれる ・ボディ剛性の強化 ・レギュレーションに沿ったものを選べば、公式なレースにも参加できる(ラインセンス必須) *ロールケージのデメリット ・車重が増し、乗り降りが面倒になる(特に街乗り) ・取付部分から錆が発生することもある ・ロールケージ剥き出しは逆に危険(エアパッドで巻かないと、怪我をすることもある) *バケットシートのメリット ・身体を固定できる ・正しいドライビングポジションが取れるようになる ・クルマの挙動がつかみやすくなる *バケットシートのデメリット ・乗り降りが面倒になる(特に街乗り) ・シートはリクライニングできない(クッションも薄い) ・腰痛持ちには不向き ロールケージやバケットシートを装着する場合、このあたりの見極めが肝心かもしれません。バケットシートに交換するだけであれば、部品代や工賃などで10万円〜くらい(1脚あたり)で収まりますが、ここからさらにロールケージを組み込み、内装を取り払うとなると100万円近いコストを掛けることになります。もし可能であれば、メーカーが生産時にロールケージやバケットシートの装着を想定している車両を手に入れた方が、長い目で見れば車両本体へのダメージおよびリセールへの影響も最低限に抑えられるのです。
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